2014-06-09

映画「グランド・ブダペスト・ホテル」プロの誇りと甘いお菓子とかわいい箱庭の三重奏。

ようこそ。Scriptaをご覧いただきましてありがとうございます。
キサラギ@kisaragi_Virです。

このあたりも梅雨入りして雨が続いていますけど、こんな日は映画館でゆったりと過ごすが吉かということで面白そうなのを見つけて観てきました。今回白羽の矢を立てたのは「グランド・ブタペスト・ホテル」おっしゃれーな感じの予告編を以前に観ていたので気になっていたんですよね。
グランドブタペストホテル

こんなおはなし。

あらすじとしては東ヨーロッパにある架空の国、旧ズブロフカ共和国にある古いホテル「グランド・ブタプスト・ホテル」。かつては名門ホテルとして名を馳せていたものの、今はその面影もありません。そこに立ち寄ったある作家がホテルのオーナーである大富豪ゼロ・ムスタファと出会い、その謎に満ちた生涯を一夜の物語として振り返るというのがストーリーの入り口です。

かつて栄光の頂点にあったホテルには伝説のコンシェルジュがいました。彼の名前はグスタヴ。絶大なお客様の信頼を得る顔であり、ホテルの多くのスタッフの中心的存在であり、そして若き日のベルボーイであったゼロの師でもある人物でした。

そんなグスタヴのサービスに心酔していた顧客の多くは富豪でしたが、そのなかの一人であるマダムD、という大富豪が突然の死を遂げたことから財産分与を巡ってトラブルが発生します。というのもマダムDが遺した遺言には、財産の中で最も価値のあるといわれる絵画「少年と林檎」を親類縁者ではなく、グスタヴに譲る、と書かれていたためです。これは当然遺族には面白くないはなしです。

かくして一枚の絵画を巡ってグスタヴとゼロがマダムDの息子一派と衝突することになるのですが、争いは次第に殺人事件をも引き起こし、警察まで巻き添えにしながらヨーロッパ中を駆け巡ることになります。

何人かは話のなかで殺害されてしまう部分もあるので残酷な表現がないわけではないのですが、全体としてはコミカルなタッチで描かれている「おじいさんの昔話」なんですね。大笑いするわけではないのですけどクスッとさせられるシーンはたくさんあります。大人が観るために作られた童話っていう表現が月並みかもしれませんけどしっくりきます。

ちなみに名画の行方がどうなるのか。これは気になりますよねえ。僕も意外だったその結果は…ぜひとも本編をご覧くださいね。

ムッシュ・グスタヴは愛すべきプロフェッショナル。

個人的にはここですね。本当にレイフ・ファインズ演じるグスタヴの生き方はカッコいい。何時何時、どこであってもホテルマンの誇りを忘れない。単に厳しいだけではなく、ゼロのような貧しい移民の少年にもベルボーイとしての教育をなんの隔てもなく施し、どんな老人であっても夜の相手まで努める。立ち居振る舞いは常に凛としていていさぎよいです。こういう男は観ていて気持ちいいですね。

だけどストーリーが後半になってヨーロッパ中を転々とするようになると流石にホテルマンの時のようにしゃんとした格好でいられなくなってくるんです。それでも心は常にホテルマンの時のまんまなんですよね。だからそのあたりのギャップが面白かったです。特に香水にはこだわりがあるらしく、どこでも「ル・パナシュ」を所望されますw。それと詩的な長い演説めいたのがどんな場所でも大好きみたいです。

時代背景としては戦時中のエピソードになっているので、そういった時代に生きた一人の男として仕事に誇りをもつこと、どんな不当な圧力に屈しないこと、自分が正しいと思うことは最後まで主張すること。そういう反戦的なスローガンも織り込まれているんじゃないかと思いますけどあまり露骨じゃないのがよかったです。

ホテルのディテールが超繊細。

すごいのはこれ。ホテルの作り込まれかたが半端ない。ピンクを基調色にした暖かみのあるホテルの外観も当然目をひくのですが、その内装のこだわりはすごいですね。小道具ひとつ、エレベーターのつくりひとつ、それにホテルマンの制服のどれをとってもかわいらしい。なにやらFENDIやPRADAが協力しているんだとか。あとから知りましたけどw。こういうアンティークな小物が趣味とかいう人には完全にストライクゾーンだと思いますよ。観ているだけで楽しいです。

ちなみにホテル内に納品しているベーカリーショップの「メンデル」っていうお店があるのですが、これは確信犯的にかわいいです。ケーキの包装に使われている箱、作中何度も出てくるスイーツ、極めつけは配達に使っているクルマ。どれもが女性のハートをキュンとさせること間違いなしなのではないでしょうか。すっごく目を惹きますからご注目を。

それと画面の構図がいちいち丁寧。(褒めてます。)僕は素人ですから難しいことはわかりませんけど、すごくきっちりとシンメトリーにフレームに入れてみたいんだなあ、と感じるシーンがけっこうたくさん。最近よくあるカメラワークでホテルを巨大に見せる演出じゃなくて、こういう撮り方だからホテルをミニチュアな箱庭感覚で観ることができたのかな…と。この映画はそういう観せかたの方がきっと映えますしね。

オススメ度は?

★★★★☆ ほしよっつ。面白かったですよ。観たあとに「こんな場所あったらじっくりと一日写真撮って過ごせたなら最高だよなあ」っていう気分にさせられるくらいに絵が奇麗。展開もゆったりで落ち着いて観られますし。よくできたミステリー小説を一冊しっかり読んだな、という感じにさせられる作品じゃないかと思います。これは映画館で観るのもいいけど、自宅でお気に入りのソファーに座りながら、大きめのグラスにクラッシュアイスをしっかりと入れてウィスキーを飲みながらみたら最高じゃないかなあ、なんて思ってしまいました。

今日はこのくらいにさせていただこうかと思います。

お読みいただきましてありがとうございました。

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