2020-06-26

昔、カメラを売っていた僕がオリンパスのカメラ撤退に感じたこと。

Never say good bye,because saying good bye means going away,and going away means forgetting.
さよならを言ってはだめだ。なぜならさよならは去ることを意味し、去ることは忘れることを意味するから。
Peter Pan /ピーター・パン

まあ、来るべき時が来た。といったイメージなのですが。オリンパスがデジタルカメラ部門を売却することに決めたようです。フィルムカメラ時代から続く84年の歴史に幕を閉じようとしています。

よく言えば意欲的だった、とでも表現できるかどうか。マニュアルカメラの時代はOMシリーズやPENシリーズで一定の評価があったものの、オートフォーカス機の時代あたりから独自の路線を突き進んだ感があります。

当時カメラを売っていた僕としてはL-20やL-30、APS機のセンチュリオンなんかはけっこう売るのが難しかった記憶があります。防水コンパクトカメラだったμシリーズはとてもよくできていたんですけどね。



デジタルカメラの最盛期でも同様だったと思います。コンパクトのCAMEDIAは安定していた反面、フォーサーズ機だったE-1も防水一眼デジカメ、という売りがあったわけですが価格帯が相当強気だったこともあって振るわなかったわけです。

(この時期にxDピクチャーカードを作った罪は大きいと今でも思いますけど…。)

近年においてようやく「マイクロフォーサーズ」という規格に落ち着き、PENをデジタルカメラのブランドとして復活、続いてOMシリーズも復活させる、といった采配でやっと軌道にのせた感はあったのですが。

振り返れば2000年から2010年くらいまででしょうか。一番市場が盛り上がった時期に他社はどんどんシステムを完成させていったなかで、オリンパスは伸び悩んだことになります。巻き返しが難しいくらいに。

カメラ業界の生き残りレース、佳境に。

尤も、この流れが急に始まったわけでもなく、以前からデジタルカメラ事業は赤字が続いていた部門でした。好調だった医療器部門があったからこそ、赤字であっても許されていた時期が長かったのです。

近年のデジタルカメラ業界の縮小は目を覆うレベルで進んでいて、この先に再度盛り上がることはおそらくないのです。スマホについているあの小さなカメラは、世のカメラを駆逐する勢いで普及しているからです。

もちろん、全てのカメラが消えるわけではないでしょう。そもそも一眼レフ、というのはある意味でプロユースな機械ですから、道具としては残るはずです。ただ、全てのメーカーが生き残れる、これとはイコールではありません。

残り少ない一眼レフメーカーとして勝ち残るためにしのぎを削って各メーカーが切磋琢磨しているのが現状。今のところはソニーが一歩先に進んでいて、ニコンやキヤノンが苦しんでいる、みたいな感じですね。

ですから、今と同じことをやっていてもこの状況をひっくり返すのは至難の技。残念ではありますけど撤退、という判断に関しては理解できるものでありますし、今ではなくてもいずれ近い未来にその判断の時期がずれるだけだと思うのです。

個人的にはOM-Dは銘機だったよ。

僕はオリンパスユーザーとしてはOM-D EM5とOM-D EM1、EM1 MarkⅡの3台のカメラを楽しませてもらいました。マイクロフォーサーズのコンセプトはレンズをコンパクトにできること。ボディサイズを小さくできること。

高品位なレンズと軽量なミラーレスカメラは実に魅力的な機種でした。旅先で歩き回りながら撮影するならとても良い選択肢だったのです。おそらくPENのデジタルを買った人も同様の感想を持ったことでしょう。

OM-Dはとっつきにくいデザインのボディです。ボタンがたくさんあり煩雑なイメージがあるのですが、それがよかったんですよ。メカメカしくて。手振れ補正も強くて防水。結構しっかりと特徴のある機種だと思ったんですけどね。

確かにバッテリーの持ちに関しては普通の一眼レフデジカメよりかはだいぶ弱かったんですけど、ぶらりと一日散策する程度には困らなかったのでそこに対するマイナスは個人的にはしないです。撮るのは素人なので切れたら素直に諦められます。

いろいろと駆け引きはあったんだろうなあ。

マイクロフォーサーズの規格自体はオリンパスだけではなく、パナソニックが連名で参加しています。(ライセンス供与、という形でライカを含む)その後にシグマなどの交換レンズメーカーも加入することになります。

複数の企業間で規格を共有する、というのは長く続けていくための布石だと思ったのですがねえ。その後、ライカとパナソニック、シグマの3メーカーは「Lマウント」という更に新しい規格を発表して採用しました。(もともとはライカTマウントなんだけど…)

このLマウントはAPS-Cサイズとフルサイズのセンサーをサポートするためのレンズマウント。上記の3メーカーのレンズに関しては自由に付け替えができる。いわば上位互換のような位置づけになったのです。

そしてパナソニックからはLUMIX S1、ライカからはSL2という重戦車みたいなカメラをリリースしたあたりが潮目、とでも言いましょうか。先行するソニーを追随するにはこういう武装方法を選択したわけですよ。

パナソニックとしてはレンズ規格をライセンス供与してくれるライカとガッチリ組んだ方がメリットが大きかったんでしょうね。シグマはレンズ屋だから勝馬の背に乗れば安泰なのです。

その後、オリンパスも2019年にOM-D E-M1Xをリリースしています。これが実質的には最後のフラッグシップモデルになりそうです。これまでのモデルとは一線を画す大型機だったのはオリンパスなりの最後の冒険だったのでしょうか。

もう少し、続きを見たいんですよ。

近年はキヤノンのEOS-MやニコンのZ50のような小型のミラーレス一眼のリリースもあって、小型軽量だったメリットも次第に色あせてきた、という面もまあ、現実的にはそうなんでしょう。

歴史にifがあれば、ですけど。OM-Dのシリーズをこだわり抜くよりもPEN-F digitalのクラシック路線を突き進んで富士フィルムのようなポジションをとることができたら少しは違ったのかなあ…。と夢想します。

正直、OM-D EM1 MarkⅢが出るよりもPEN-F digital MarkⅡが出た方がインパクトが大きかったんじゃないかと考えてしまうんですよね。

ただ、それが勝負手になって最終局面を逆転できたのか。というとそういう予想は多分できなくて、それでも同じ結末に帰結するはずです。モノが良くて売れても赤字体質から脱却できなかったわけですから。

でもねえ。本当にいいところまで辿りついていたと思うんですよねえ。ZUIKOレンズは優秀なのが多いですし。最初のPEN E-P1なんかみたときは、「うわ。これは面白いの作ってきたなあ。」とホントに感心しましたし。

ミラーレスカメラのブームがあった時期などはこのメーカー無くして語れませんからね。こんなところで終わってもらっては困るのです。

一応、今後わかっていることを書くと、ブランド名は残した上で映像部門を新会社として作った上で投資ファンドに売却するそうです。ユーザーサポートも引き続き行うようなので当面は修理などの心配もなさそう。

あとは良き譲渡先が決まることを祈るばかりです。最近はこういった統廃合の話が出ると中国系の企業が出張ってくるものですから、願わくば国内の企業で志あるところが引き継いでくれたらいうことがないんだけどなあ。

ZUIKOは「瑞光」と書きます。「吉兆を示すおめでたい光」の意味。名前の通りに。そのいく先に栄えある光があらんことを。

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