2019-05-10

P5R「ペルソナ5ザ・ロイヤル」発表。令和初の新作に期待を込めて。

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キサラギ@kisaragi_Virです。

不知周之夢為胡蝶与、胡蝶之夢為周与。
知らず周の夢に胡蝶と為れるか、胡蝶の夢に周と為れるか。 -荘子-

老舗ゲームソフトメーカー、アトラスが手がける人気タイトル「ペルソナ」の最新作が先日発表されました。タイトルはペルソナ5R。「R」はロイヤルのRだそうでいわゆる完全版、ということになります。

前作のペルソナ5は2016年の9月に発売ですから約3年ぶりの更新。シナリオを追加したマイナーアップデートのようなものに感じる方も多いと思いますが、ファンからすれば「ついに来たか!」というタイトルです。そこで今回は僕がなぜ、そこまで期待していたのか、といった点にフォーカスしてみました。

ちなみにこのページは僕が気まぐれに思ったことを書いているだけなので、攻略のことなんかやお買い得情報を書くつもりはありません。でも、どこが面白くてこのシリーズをプレイしているのか、それを書いてみようと思うのです。



初代PERSONA。ここから始まる。

アトラスが「女神転生」という滅茶苦茶重たいテーマのRPGを作っていた時代から、ジュヴナイル向けに作られたタイトルが「女神異聞録ペルソナ」。これは1996年の9月に初代PlayStationで発売されました。従来の東京を舞台にした世紀末的世界観に至る作品から、学園生活を舞台にした日常感溢れる中を少年たちが奔走する作品へと大きく舵を切ることになります。

プレイアブルキャラクターが一気に増え、個性と性格が増えたことにより新規ユーザーに対する「とっつきやすさ」と、いわゆるファンタジーRPGのような架空の世界観よりも現実的に描かれた街並み、彼らのファンション、行動、感性が等身大の人間として共感を得やすくなったのがポイントなんだと思います。

当時の僕は「女神転生」支持者だったので、正直にいってだいぶライト向けに作られた作品なんだろうな。なんて軽く考えていたのですが、このタイトルはのちにして語り草となる「凶悪タイトル」の一本となります。

「女神転生」の色合いが強く、セーブ不可の巨大ダンジョンが数大きく存在し、ボスを倒しても自力でいまきた道を引き返して出るまで油断できない、出会い頭の即死事故が頻繁にある、ひたすらエンカウントが発生する、クリア時間はゆうに100時間を超える、といったシュークリームの中に激辛マスタードが入っているようなタイトルでした。
※のちにPSPでだいぶマイルドに調整されたリメイク版が出ていますから、今やるのならそちらがおすすめですね。

幸いにして、というかなんというか元々全滅慣れしていることもあって「かなり歯ごたえのあるタイトルに仕上がっているなあ。」くらいの感覚でクリアはしました。ここからのお付き合いですので相当に長いご縁、ということになりますね。

表現能力が進化したペルソナ2。

その後も1999年と2000年に「ペルソナ2罪」「ペルソナ2罰」の上下2タイトルをPlayStation2から発売します。このあたりからですね。今のペルソナのポジションを確立していく要素がしっかりとしてきます。ペルソナを使った戦闘要素以外に「音楽の品質」の向上と「アニメパートの挿入」がなされるようになりました。特に楽曲の品質を上げたことは今日まで続くシリーズの成功に大きく貢献するものがあると思います。

これは初代から最新作のペルソナ5まで一貫してサウンドを手がけるコンポーサー、目黒将司氏の功績が大きいですね。ボーカル入りの音源が人気となり、のちにリズムゲームが発売されるきっかけがすでにここにあったのです。

サブタイトルでもある「噂は現実となり、人は罪を知る。」という言葉。巷間で話題になったことが突然現実に現れ、それによって人の本質を垣間見ることができる。人間の二面性をうまく描いたシナリオはやがて荒唐無稽な展開となり予想外のラストへと向かうのですが、当時にしてはかなりエッジの尖った終盤を迎えるため、賛否両論あると作品となりました。
※個人的には「聖槍騎士団」の音源がご飯が三杯食べられるくらい大好きです。

シナリオとしては前半の「罪」は従来のジュヴナイルベースなシナリオであるのに対して後半の「罰」は一気にメンバーが入れ替わりアダルトな雰囲気を醸し出す作品となっています。個人的にはこの「罰」のキャラクター達が大好きです。このタイトルは1995年に発売された女神転生の派生タイトル「ソウルハッカーズ」シリーズとクロスオーバーしている部分があって、ソウルハッカーズの持っているハードボイルド要素がうまくミックスされた、大人でも楽しめる一作となっています。

ちなみに1と2、ソウルハッカーズの3つは時間軸が繋がっていて、更に登場人物の一部は過去作品の「女神転生if」からも参加しています。これはペルソナのこの作品までが女神転生シリーズを手掛けてきたプロデューサー、岡田耕始氏のものによるものだからなのですが、開発スタッフがしれっとNPCでゲームに登場するあたりが面白いところなのです…。今となっては知る人ぞ知る。なのかもしれませんね。

※作中に登場するレストランの給仕「地獄のギャルソン」ことギャルソン副島はこの後のシリーズでデザインを担当することになる副島成記氏だったりました。他にも多数、登場します…。
※シナリオに関わるキャラクターの中では麗 鈴舫(レイ・レイホゥ)が一押しです。もはや彼女が見たくて買っているタイトルと言っても過言ではない…。

現在に繋がるシステムを築いたペルソナ3。

更に2006年に発売された「ペルソナ3」からは製作陣が変わったことによりシステムが一新され、ストーリーを進めるにあたって「時間軸」の流れが追加されます。シナリオに関わる人間との「コミュニティ」が重視されるようになり、一回クリアしただけでは全てのシナリオを見ることができないようなボリュームとなりました。従って「周回プレイ」を行うことがある程度の前提となっています。

日常のコミュニティを進めていくことで主人公の成長が進み、シナリオも春から夏、秋、冬へと移り変わっていきます。最初こそ戸惑いましてけど、「限られた時間の中をいかに有効利用するか」ということは人生でも全く同じことで。そういう見方をすると学生生活をいかにして謳歌するか、という擬似的な青春体験ができる点ではとても面白い構造になっていると思います。
※個人的には桐条 美鶴を押します。処刑される権利があれば迷わず買います。

主人公ことキタロー(俗称)こと有里湊(漫画版)こと結城理(映画版)は最初は一見すると無気力でやる気のない少年なんだけど、ストーリーを進めるにつれて愛嬌のあるおしゃれ天然ジゴロに成長しますので?彼の成長していく姿を楽しんでください。

ただ、それだけではなくRPGとしての育成要素として存在するのが、「影時間」という全く別次元の亜空間があること。時間の流れないその空間にある、「タルタロス」と呼ばれる巨大な塔を踏破することが大きな目的の一つでもあります。ここがこれまでの作品と違うのは、いわゆる「自動生成型ダンジョン」であること。簡単にいうと「風来のシレン」や「トルネコの不思議なダンジョン」みたいなものですね。

これがプレイヤーの評価を二分するところで、毎回違う展開を楽しめる層と、同じ作業の繰り返しに感じる層の分かれると思います。僕はこの作品に関しては残念ながら後者。楽ではあるのだけどある程度は頭を使ったり、謎が解けるような要素は欲しかったです。

それでも、これまでのシリーズのように一回ダンジョン攻略にかかると長期戦になる、といった時間拘束から解放されてやりたいときにやりたいだけ進められる、といった気軽に遊べる点はよくできていると思いますよ。

このP3からリメイク、というか派生タイトルが出始めるようになります。後日談を追加した「ペルソナ3 フェス」やPSP版として女性主人公を追加した「ペルソナ3 ポータブル」が発売されました。今日、ペルソナの新タイトルが発売されると後日に完全版が出る、と思われる流れはこの作品からです。

単にリメイク、というだけではなく、ファンの見たいシナリオをしっかりと入れてくるあたりが売れる理由だと思います。新規の人は新しい方を買えばいいし、前作プレイ者は新しい視点からプレイできるわけで、一方では完全版商法と言われるかもしれないけど、個人的には嫌いじゃないです。

コミュニティが重要視されるペルソナ4。

2008年、「ペルソナ4」が発売されるとコニュニティ要素は更に強化されていきます。P3の主人公がどっちかというと内向的でナイーブな少年像だったに対して、P4の主人公こと番長(俗称)こと鳴上悠(漫画版)は色々な意味で「恐れ知らず」な性格となっているので、前作よりもより活発的に、学内だけではなく町中の様々な人間と交流するのが特徴的です。

ただでさえ時間を有効活用しなけれないけないシナリオなのに、「虫取り」「釣り堀」「家庭菜園」「プラモデル作成」などクリアにはそれほど関係ないけどやっておいた方が有利になるサブ要素を投入したことで番長が奔走することになります。なかでも「釣り」は腰を据えてかからないとリアルの時間まで奪っていく難易度となっております…。

のちにシナリオを補完したP4G(ゴールデン)をPS Vitaからリリースすることに。これはPSPのおすすめソフト、JRPG枠には大体入ってくる人気タイトルとなります。携帯機ながらプレイ時間は据え置きハード並みに長時間の攻略を必要としますが、これをクリアしてこそP4はコンプリート、と言える一作です。

歴代のペルソナシリーズの中でも一番はっちゃけてるのがこのペルソナ4です。基本会話のツッコミが激しい。メンバー内の心の内側に切り込む描写が多いのでより感情移入しやすくなっているのが良い点だと思います。恋愛要素も豊富になり、複数の女性と同時に深い関係になるのか、一人に誠実に向き合うのかで人間性が出るというかなんというか…。まあ、どのようにでも楽しむことができる自由度の高い作品です。

※人気が別れるキャラクターが多いですが、白鐘 直斗だけ頭一つ抜けたチートじゃあないですかこんなの…。

世間的に認知されたのはこのペルソナ4の影響が強いようです。皮肉なことがあるとすれば、この辺りの時期にアトラスの親会社であったインデックスの経営が悪化したことでゲームソフトメーカーとしての運営がゴタゴタとしたことがあったこと。結局のところはセガゲームスの傘下に収まったことで収束したのですが、このあたりの不遇の時期を耐え抜いたのが「番長」の時代、ということです。
※ゲーム内容をトレースしたアニメ「P4A」によるファン層獲得も大きな要素になりました。

今までRPGがメインだったアトラスが他社とのコラボ企画での格闘ゲームやリズムゲームへの参戦など、八面六臂の活動を経てPlaystation3/4の両ハードで2016年に発売されたのが「ペルソナ5」と。まあ、こういった遍歴ですね。

ペルソナ5は現代の東京を映す鏡のような作品。

前作から8年。長い時間を経て発売にこぎつけたペルソナ5は日本ゲーム大賞優秀賞ゲームオブザイヤー年間1位など多くの評価を得た作品となりました。前作からのシステムを引き継ぎ、一回では遊び尽くせない膨大なボリュームと、これまでよりも更に洗練されたポップなグラフィックに目を奪われる鮮やかな進化を遂げたのです。まあ、紋切り型の説明はこのくらいで。

ここからは個人的に思うことを。今作は舞台を東京に持ってきました。これまでの作品は全て架空の都市の話で、時間軸としては発売された時期を反映した世界を描いています。これはこれでよくできていて商店街にしても学校にしても、なんか本当にありそうな空気を醸し出していたのですが、これを東京でやったことが面白いんですね。

舞台は確かに東京で、作中の街並みを歩けばまさにそんな感じなのです。実際にある店舗なんかは出てはこないんだけど、違和感がない。新宿の街を歩けば新宿っぽいし、渋谷駅なんかは相当細かく作り込んであります。山手線やメトロっぽい電車も走っているし切符代も結構リアル。「龍が如く」みたいなオープンワールドではないんだけど、これもリアリティのかたちの一つだと思います。

加えて女神転生からのユーザーであればあるほど、「東京」という場所を舞台にすることには感慨深いものがあります。(女神転生の場合は大体東京が壊滅的被害を被りますが、今回はそんなことはありません。)そこに今作では久しぶりに従来の「アクマ」型のエネミーを登場させています。実にこれが良い。「ペルソナ」なんだけど「女神転生」をプレイしている感覚があるのです。

主人公となる青年は「理不尽な大人の権力」によって未来を閉ざされた過去を持ちます。不意に与えられたペルソナの能力によって似た境遇の仲間を集め、「義によって悪を裁く怪盗団」を結成し、弱い存在を苦しめていた「悪しき心を持つ人間を改心させていく」といったストーリーです。勧善懲悪のゲーム展開というのはRPGにおける王道ですが、この悪党像が現代を反映しているのが実に特徴的です。
※怪盗団なら新島 真一択。診療所の武見 妙、美脚組み替えエフェクトは反則だと思う…。

体罰を振るう教師、盗作を繰り返す画家、ドラッグの運び屋を強要するギャング、腐敗した政治家。今の時代ではニュースや新聞で目にするような事件が作中には出てきます。ファンタジーRPGのような「伝説の剣を手に入れる」であるとか「街を苦しめるドラゴンを倒す」のような展開とは異なり、社会風刺の強い作風というのは大人がやっても十分に楽しめる内容です。

いわゆる「現代社会の闇」を暗躍する怪盗団、というピカレスクな一面と「東京の街で生きる高校生」のジュブナイル性を絶妙なバランスでブレンドしたのがペルソナ5であり、歴代作と比べてスリル感溢れるストーリー展開となっています。

今作では対象となるターゲットの精神世界「パレス」に潜入し、その犯罪を引く起こす要因となったコア「オタカラ」を盗み出すことでターゲットを改心させる、というのが基本的な流れとなります。近年のシリーズのような自動生成型ダンジョンではなく、攻略には様々なギミックが組み込まれているので単調な移動だけではないのが楽しいです。
※2周目がダルい、といった意見もありますが…。

環境面でいえば、今作はPlayStation3/4のマルチプラットフォームになっているためもあってか、大作RPGにある「ロード時間の長さ」を感じることがほとんどありません。その時間をカットインのアニメにしているのですが、これもよくできている。一回ダンジョンに入ると結構長い時間を攻略にあてることになりますが、その際のストレスも軽いのはとても大事なことだと思います。

最後に。ここまで触れていませんでしたが、歴代全てのシリーズには唯一登場する人物がいます。主人公のペルソナを司る導き手にして謎の老人「イゴール」。今作の彼の役回りこそ一番の見所でした。アトラス作品は他のメーカーに比べ、とてもネタバレに厳しいことで知られています。だからこそ僕も予備知識なしにそのシーンを観ることができましたが、まあ、シビれる演出です。うまい。もうね、これをやりたくて終盤まで引っ張り続けたんだと思うと見事に「騙された」わけです。

こればっかりは歴代の作品をプレイしてきた人間だけに与えられたサプライズなので、今作だけをプレイしても感動は薄いかとは思いますが、メタな意味で予想を超える展開をなっていて、製作陣のしてやったりの顔が思い浮かぶのが悔しいやら嬉しいやら。シナリオ終盤のトリックも実に秀逸ながら、プレーヤーにも度肝を抜かせる展開とは予想だにしていませんでした。

2019年10月。P5Rに期待を込めて。

ここまでいろいろと書いてきました。基本的にはこれ一本で十分に楽しめます。通常のRPGよりもクリア時間は長いタイトル。早い人でも80時間、平均で見ても100時間は相当に長いです。(僕は大体110時間くらいかかりました。)それでも消化しきれないイベントがあるので2周目、といった流れになるのですが、ファンからすれば「まだ、もっとあるじゃん!」となるのがこの作品のすごいところ。

先日発表され公式サイトもすでに情報更新がされていますが、今年の10月に新しいタイトル「P5R」が発売されることになっています。続編、というよりはこれまで同様「完全版」に近い内容で、さらに新しくキャラクターを投入、新しい街の追加、そして「P5」ではプレイできていなかった時間枠の解放、と「やっぱりそうくるよねえ…。」といった展開でとりあえず予想通りです。

時間枠が増える、追加キャラクターがある、ということは当然シナリオの追加があるわけで、前作をベースとしたさらにボリュームアップは当然として、個人的には前作で消化不良だった部分の補完もやって欲しいところ。最終局面で対峙するんじゃないかと思っていた「あの人」は予想に反して終盤に中途半端にいなくなったのでこれはオチをきちんとつけて欲しい…。

まあ、色々と希望はありますが、これまでのシリーズを飽きずに続けてきた僕としては、大いに期待をしています。と、まあここまでハードルをあげる書き方をしてきましたが…。果たして怪盗団はどんなトリックを仕掛けて僕たちの予想を超えるサプライズを提供してくれるのか。楽しみですね。

さてさて。このシリーズがいかにして今のタイトルに辿りついたのか。何が僕を楽しませてきたのか。ただそれだけを書いてきました。昔ほどのゲーマーではなくなってしまったけれども、今こうして記事を書いているくらいに新作を楽しみにしています。もしもこの記事に何かの縁で流れついて読んでくれる人がいたのならば。最後はこの台詞で締めなければいけないでしょう。

「…貴方は最高の客人だった。」

※記事の一部に間違いがございました。ご指摘いただきありがとうございます。

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コメント2件

  • ジンガ より:

    1999年と2000年に発売された2罪と2罰はプレステ2ではなく初代プレステのソフトです
    プレステ2で発売されたナンバリングはP3、P3F、P4のみです

    • キサラギ より:

      ご指摘ありがとうございました。修正をさせて頂きます。

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